2017年09月21日

これがイーゼンハイムの祭壇画だ


はい、それではこの美術館の目玉である、マティアス・グリューネヴァルト作の、
イーゼンハイムの祭壇画です。

これはもともとコルマールから南に 20km ほどのところにある、イーゼンハイム村の
聖アントニウス会修道院付属施療院礼拝堂の祭壇にあったものです。

ま、言ってみれば病院内の礼拝堂ってところなんですが、当時ここに入院していた人たちは、流行り病だった麦角病という得体のしれない病気にかかった方々でした

これ、麦に寄生する菌の一種で、有名なところとしては、ライ麦に取り付き、過去に多くの人を麦角病へと追いやったクラギケプス・プルブレアという種類があります。

麦角の毒は 「 バッカクアルカロイド 」 と呼ばれるもので、この毒は、
体重 1kg あたりわずか 0.001 〜 0.003 mg で症状を引き起こすといわれ、きわめつけの猛毒なんだそうです

でも当時はそんなことはわからず、普通に生活して普通にパンを食べていて突然このような症状になるということでとても恐れられていました

この症状にかかると、手足が黒ずんだり、ぼろぼろになってちぎれたり、精神錯乱を起こしたりするそうです。

当時、この病気は 「 聖アントニウスの火 」 と呼ばれていました。

聖アントニウスはこの病気にかかって足を失いながらも、114 歳まで生き延びたとされることと、聖アントニウス派の修道士たちが、この病気の治療に尽力したからだと言われています。

「 火 」 と名前がつけられたのは、患部がまるで炎であぶられるように、酷い痛みに襲われることからの連想だそうです。

またこの病気にかかると、聖アントニウスの聖地であるリヨンまで巡礼することを奨められました。

すると不思議なことに、巡礼を開始し、聖地に近づくのに従って、頭痛や壊疽 ( えそ ) などの麦角の諸症状が急速に改善に向ったそうです。

人々はこれを 「 聖アントニウスの奇跡 」 と呼びました

実際は巡礼を行っている最中に断食を行ったり、麦角にかかった麦を口にすることがなくなることなどが、大きな要因になっていると言われています。

そんな恐ろしい病気の入院患者がお祈りをする祭壇がこちら。

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この祭壇は観光順路から行くと一番奥においてあるんですが、中央の椅子に座っているのが聖アントニウスです。

祭壇画はこの本尊を閉じるような感じで、両面に三重の扉のような感じになっています。

この美術館では全部外して展開図のように設置してあるので、ちょっとわかりずらい部分もありますが、その辺は実際に美術館に行って、祭壇の模型があるのでそれで感じてくださいね。


それでは一番閉じた部分の絵から。

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こちらは 「 キリストの磔刑図 」 です。

通常はこのような状態になっていたそうです。

イエスはやせ細って身体中にぶつぶつが現れているのは、麦角病の患者のようでもありますね。

その足元で祈ってるのがマグダラのマリア。

左側で失神しているのが聖母マリアで抱きかかえているのが弟子のヨハネです。

右側の人は洗礼者ヨハネですが、このときはもうすでに斬首されてなくなっていたんですが、こちらには書き加えられています。

ヨハネのところに見える文字は、

illum oportet crescere me autem minui

あの方は盛んになり、私は衰えなければならない

と書かれています。

キリストが救世主であるってことを暗示しているんですね。

一番左の人は、何本もの矢が刺さった姿で描かれている、聖セバスティアヌスです。

彼もまた中世に猛威を振るったペスト患者の守護神でありました。

そして一番右は、聖アントニウスです。


では、次のパネルに行ってみましょう。

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こちらは先ほどのパネルを開けると出現する絵です。

左側のは 「 天使の奏楽 」 とタイトルがついているものです。

受胎告知のシーンで、大天使ガブリエールがマリア様に神の子を宿されたと伝えた時、天使がハッピーソングを奏でている、そんな光景です。

天使たち...の中には割とグロテスクなものもいるのが面白いですよ。

右側は、「 キリストの降誕 」 というタイトルで、神の子イエスが生まれたシーンですね。


で、実は祭壇画にした場合はこの左右にもう一枚ずつパネルがあります。

それがこちら。

unterlinden17 (10).jpg



実際の祭壇画にすると、これ左右が逆になるんですが、右側のパネルが 「 受胎告知 」 です。

もうおなじみのシーンですが、マリア様の手元にある本はイザヤの予言書だそうです。

そして左上にちっこく描かれているのが、その預言者イザヤ

彼の持ってる本には、

イザヤ書 7.14
「 それゆえ、わたしの主が御自ら あなたたちにしるしを与えられる。 見よ、おとめが身ごもって、男の子を産み その名をインマヌエルと呼ぶ。 」

イザヤ書 7.15
「 その子が悪を捨て、善を選ぶことを知るころになって、凝乳と、蜂蜜とを食べる。」

と書かれており、自らのイザヤ書を持って受胎告知の予言を表しているそうです。


左のパネルは本来は右にあるんですが、こちらは 「 キリストの復活 」 ってタイトルです。

足元に描かれた兵士たちは眠りこけており、棺桶から明るい光とともに登っています。


では次のシーンへ。

これを開けると一番初めに紹介した聖アントニウスの祭壇が出てきます。

そしてその両側にはこんな絵が見られるんです。

unterlinden17 (8).jpg



これもパネルをばらしたので実際の祭壇画とは左右が逆になっています。

まず右に見えるのが、「 隠者パウロを訪れる聖アントニウス 」

聖パウロもまた人里離れたところで一人で修行をしてました。

毎日大鴉が一切れのパンを持ってきてくれ、それを食料にしていました。

そんな噂を聞いた聖アントニウスは是非とも会ってみたいと、ケンタウルスとサテュロスに道を教えてもらいます。

二人は出会ったとき、大鴉は二切れのパンを持って来たというシーンです。

そしてもう一枚のパネルは、とってもおどろおどろしいのが描かれています。

「 聖アントニウスの誘惑 」

聖アントニウスは、砂漠で禁欲的な生活をしていたんですが、魑魅魍魎としたバケモノに襲われ、
アントニウス危機一髪って場面です。

悪魔たちの攻撃恐ろしく描かれ、これが疫病を表しているみたいですね。

一番左下に描かれている、半分死にかかってる人は、麦角患者特有の症状が描かれています。

こんな恐ろしい光景でも、上に描かれたイエスが聖アントニウスを救ってくれるんです。


というわけで、一部ではありましたが少しこの絵を解説してみました

絵画というのはいろいろな解釈があるので、本当は書いた人に聞かないと何を描かんとしたのか永遠にわかりませんが、あとからあーだこーだ考えるのも面白いですね。

というわけで、いつもは人で一杯のこのホール、今回は貸し切りなのでガラガラでした。

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ゆっくりお話を聞けましたよ


では次は、19 〜 20 世紀の美術がある新館へと移動しました。


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posted by まいど! at 06:00| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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